あらすじ
ISBN: 9784087460681ASIN: 4087460681
京の千本通り、羅城門跡の旅篭に逗留中の眠狂四郎に、町奉行から呼び出しがかかった。禁裏から高い身分の姫が失踪、どうやら、大阪商人が関係しているようだ。御所が金のために姫を売った!?ひそかに姫を取り戻すべく、狂四郎は動きはじめる―表題作をはじめ、中、短篇八作品を集める。さらに狂四郎の創作秘話を綴ったエッセイ三篇も収録する。
柴田錬三郎が描く眠狂四郎は、虚無を纏った究極のアンチヒーローです。本書では禁裏の腐敗という重厚な背景を背に、彼の孤独な魂が鮮烈に浮き彫りとなります。流麗な筆致で綴られる円月殺法の静謐な緊張感と、裏社会の毒々しい美学が交錯する瞬間こそ柴田文学の真骨頂であり、読者の心を射抜く本質的な魅力と言えるでしょう。 映像版では市川雷蔵らが体現した耽美な様式美が見事ですが、原作には視覚を超えた精神的深淵が刻まれています。行間に滲む狂四郎の自己嫌悪や冷徹な知性は、活字でしか味わえない深みです。映像が美の極致を見せる一方、テキストは彼の内面に潜む業を克明に補完し、両メディアを往復することでこの孤高の騎士道は真に完成するのです。
実写化・アニメ化された映画やドラマを観て、原作小説ならではの美しい心理描写や、映像化で新たに加えられた解釈・演出との違いを楽しみましょう。