歴史小説の大家・柴田錬三郎の原作を映画化。江戸で剣の技を磨いた高岡信吾が3年後に故郷に戻ると、策略によって父と妹が惨殺されてしまう。死に瀕した父の口から自分の出生の秘密を聞いた彼は……。剣3部作の第1弾。
三隅研次監督と市川雷蔵が放つ本作は、剣戟映画の枠を超えた峻烈な美学の結晶です。雷蔵が体現する、宿命に抗い虚無に呑み込まれる孤高の剣士。その端正な容姿から溢れる悲哀と、無駄を削ぎ落とした静謐な殺陣は、観る者の魂を震わせます。冷徹なまでに研ぎ澄まされた構図が、残酷な運命の美しさを際立たせています。 特筆すべきは、静と動が交錯する「死の舞踏」とも呼ぶべき芸術的演出です。天知茂との対峙に見られる圧倒的な緊張感は、人間の業と孤独の本質を鋭く突きつけます。時代劇の様式美を借りて、現代にも通じる実存の苦悩を描き切った本作は、邦画史に輝く至高の傑作と言えるでしょう。
監督: 三隅研次
脚本: 新藤兼人 / 柴田錬三郎
音楽: 斎藤一郎
撮影監督: 本多省三
制作会社: Daiei Film