あらすじ
ISBN: 9784041021910ASIN: 404102191X
「デラシネ」という言葉は「故郷を捨てた人々」として否定的に語られてきた。
だが、社会に根差していた当たり前が日々変わる時代に生きる私たちに必要なのは、
自らを「デラシネ」--根なし草として社会に漂流する存在であるーーと自覚することではないか。
『大河の一滴』『下山の思想』など、大きな時代の変化のなかでどう生きるかを考え続けてきた作家が、
自らの朝鮮半島からの引き揚げ体験を引きながら、絶対的なものが融解する時代を生き抜くヒントを提示する。
五木流生き方の原点にして集大成。
<目次>
第一章 難民の原体験
第二章 「新国家主義」と越境者
第三章 デラシネの思想
第四章 異端の意義
第五章 揺れてこそ人間
第六章 動的な人間観
第七章 直観を信じる
第八章 「病む力」を育む
第九章 時には涙を流す
第十章 愁いの効用

日本の文芸界が生んだ孤高の物語作家であり、時代を穿つ鋭い洞察力で映像世界の地平を広げ続けるマエストロ、それが五木寛之です。彼は単なる劇作家の枠を超え、人間の内面に潜む光と影を言葉という血肉で描き出してきました。1990年代末の混沌とした東京を舞台に、警察と裏社会の攻防を鮮烈に描いた傑作テレビシリーズ、トウキョウ・バイスで見せたその手腕は、日本国内に留まらず、ハリウッドを筆頭とする国際的なプロダクションからも極めて高い評価を得ています。彼のキャリアを俯瞰すると、重厚な社会派ドラマから、胸を打つロマンス、そして人間賛歌としてのコメディに至るまで、驚くほど広範なジャンルを網羅していることが分かります。その根底に流れているのは、過酷な現実の中でなおも輝きを失わない人間の尊厳への深い情愛です。膨大な作品群を通じて磨き上げられた叙情的な表現と、観客の心を鷲掴みにするドラマチックな構成力は、現代のストーリーテリングにおける一つの到達点と言えるでしょう。キャリア統計が示すその一貫した質の高さと、ジャンルを自在に横断する多才さは、彼が単なる多作なライターではなく、物語の力で時代を定義する稀有な表現者であることを証明しています。五木が紡ぐ言葉は、これからも国境や世代を越え、観る者の魂に消えない灯をともし続けるに違いありません。