あらすじ
CGオペレーターの仁科縁はある事情から人と関わることを避けて生きてきた。ある日、上司であり叔父である訓の誘いを断りきれず参加した飲み会の席で縁は編集者の岩崎数真と出会う。数真には、子どものように何でも触って確かめる癖があった。それは子どもの頃、目が見えなかったことに起因すると告白する数真。その話を聞いた縁は過去に出会った「かず」のことを思い出す。縁が壊してしまった幸福な時間と共に―。一穂ミチが贈るオンリーワン・ラブストーリー。
ISBN: 9784813012672ASIN: 4813012671
作品考察・見どころ
一穂ミチ氏は、心の奥底に沈殿する「静かな孤独」を掬い上げる名手です。本作で描かれるのは、視覚という不確かな情報に頼る我々が、触れることでしか確かめられない「真実の体温」をいかに見出すかという切実な問い。CGという虚構を創り出す縁と、かつて光を失っていた数真。正反対の視座を持つ二人が重なるとき、凍てついていた過去が、痛切なまでの優しさを伴って動き出します。 人間が他者を受け入れる際の「覚悟」を、これほどまで美しく、鋭く描いた作品は他にありません。かつての過ちさえも愛おしい人生の一部として編み直していく一穂文学の真髄。五感を揺さぶる精緻な言葉の数々は、読み終えた後もあなたの心に消えない残像を残し、魂に深い救いをもたらすはずです。
