益田ミリは、日常に潜む「ささやかな違和感」を掬い上げる稀代の観察者です。本作は、時代の移ろいで口にしづらくなった言葉を通じ、大人の心に芽生える羞恥心や戸惑いを鮮やかに言語化しています。単なる言葉の変遷ではなく、言葉の変化から「自分と世界の距離」を測り直す、鋭くも優しい洞察に満ちた一冊です。
「彼氏」や「ズボン」といった語彙の背後にある自意識と哀愁を、著者はユーモアを交えて全肯定してくれます。不器用に言葉を選びながら生きる私たちの愛おしさを、これほど情熱的に描き出したエッセイは他にありません。読後、あなた自身の「言えないコトバ」さえも、愛すべき宝物に変わるはずです。