森村誠一
福永幸一は帰宅途中、暴漢に襲われていた美貌の女性・藤宮さやを救った。身を寄せる場所がなく衰弱していたさやを福永は自宅で看護する。やがて、互いにひかれあい、結ばれるふたり。だが翌朝、さやは福永の元から去っていった。幻の童謡詩人の詩集から切り取った一片の詩と置き手紙を残して―。数年後、一冊の詩集を持っていた少女の母親が殺された。詩集には福永の名前と住所が書かれた紙片が挟み込まれていた...。警視庁捜査一課・棟居弘一良はこの殺人事件を通じて再び人間の宿業と対峙することになる。日本ミステリー史上空前のベストセラーが新たな息吹と共に甦る。
森村誠一が放つ本作は、一編の詩を媒介に交錯する情愛と「人間の宿業」を浮き彫りにした、魂の彷徨を描く人間讃歌です。不朽の名作に現代の息吹を吹き込んだ物語は、社会の歪みの中で葛藤する人々の孤独と尊厳を鋭く問いかけます。著者の端正な筆致が、読者の心に消えない痛みと深い感動を刻み込みます。 映像版が放つ情念の強さに対し、原作は言葉の行間に滲む叙情性と心理描写という独自の深みを持っています。映像の劇的な熱量とテキストが持つ思索の奥行きが共鳴し合うとき、物語はより立体的に響き渡るでしょう。悲哀の果てに灯る希望を、ぜひ文字と映像の両面から体感ください。
森村 誠一 は、日本の小説家・作家。元ホテルマンであり、ホテルを舞台にしたミステリー作品を多く発表している。江戸川乱歩賞や日本推理作家協会賞など数々の推理小説の賞を受賞した。
実写化・アニメ化された映画やドラマを観て、原作小説ならではの美しい心理描写や、映像化で新たに加えられた解釈・演出との違いを楽しみましょう。