あらすじ
チェーンレストラン「シリウス」を運営する株式会社オオイヌに入社したかなめは、店舗でやりがいのある日々を送るも、数年後に製菓部への異動を告げられる。製菓部は製菓工場内にあり、どこか閉鎖的な部署だ。頭の固い製菓部長のもと、早く仕事を覚えて戦力になりたいと思うものの空回りする日々。偶然再会した幼なじみの柊太はカフェで楽しそうに働き、しっかり自分の夢を持っていた。異動願いを出すべきか踏ん張るべきか、30歳を前にして焦りが増していく。ある日、デザートの打ち合わせに神保町の本社を訪れたかなめは、新田つぐみと出会い、「キッチン常夜灯」を教えてもらう。シェフたちとの交流と丁寧な料理を通じて、仕事のやりがいや働く環境、そして自分自身にじっくり向き合うようになる。
目次
プロローグ
第一話 飴色のタルトタタン 希望の輝き
第二話 勇気と挑戦のブーダンノワール
第三話 鯛の塩包み焼き 始まりの春の香り
第四話 満ち足りた夜に パテ・アンクルート
第五話 頑張った私へ シェフの特製ブイヤベース
エピローグ
ISBN: 9784041155011ASIN: 4041155010
映画・ドラマ版との違い・考察
本作は働く者の葛藤と再生を、料理という慈愛に満ちた媒体で描く白眉の一冊です。三十歳を目前にした焦りや組織の論理に抗う個の苦悩を、長月天音は温かな眼差しで活写します。一皿ごとに綴られる「仕事への矜持」が、タルトタタンの飴色のように艶やかに、そしてほろ苦く胸に迫ります。 実写版が美食を鮮烈に捉える一方、原作は活字でしか届かない「内面の震え」を精緻に掬い上げます。映像の色彩が読者の想像力を補完し、本が持つ心理描写の深みが物語を完成させる。この重奏的なシナジーこそが、閉塞感を打破し、明日を生きるための確かな勇気を読者の魂に灯すのです。
