あらすじ
ISBN: 9784344044111ASIN: 4344044118
昔の記憶って、いったん思い出すと、どうして止まらなくなるのだろうーー。
実家は、元花街、東京・尾久のとんかつ屋「どん平」。
話題作にひっぱりだこの個性派俳優が綴る破天荒な家族と愉快な街の記憶
話題の映像作品や舞台で鮮烈な印象を残す俳優の安藤玉恵さんの実家は、元花街、東京・尾久のとんかつ屋「どん平」。阿部定事件が起きた尾久三業通りの待合茶屋は、「どん平」から20メートルくらいのところ。一家の大黒柱だった祖母、放蕩する祖父、数々の地元の伝説を持つ父、太宰治好きで、ファンキーで臥せがちな母、そんな母を一緒に看病した兄。そしてまわりにはいつも商店街の人たちがいたーー。若手芸人が小学校の通学路で稽古し、着物を着たお姉さんが歩いていた時代、昭和の最後のほうの話。
なつかしくて、おかしくて、バカバカしいのに、涙が出ちゃう。そんなノスタルジックな感情を呼び起こす名エッセイ。

安藤玉恵は、日常の隙間に潜む真理を鮮烈に描き出す、現代日本映画界に欠かせない稀有な表現者です。東京・西尾久の老舗とんかつ店の娘として生を受け、かつては外交官を志した彼女が、早稲田大学で演劇の魔力に魅入られたことは、日本の表現界にとって幸運な転換点となりました。劇団「ポツドール」で研鑽を積み、名匠・廣木隆一監督に見出された映画デビュー作以来、彼女はスクリーンの中で、生身の人間が持つ多面的な美しさと業を体現し続けています。 その足跡は、数多の作品群に深く刻まれており、どのような役柄であっても、一瞬で物語のリアリティを底上げする圧倒的な存在感を発揮してきました。劇作家タニノクロウを伴侶に持ち、公私ともに芸術の深淵に触れ続ける彼女の演技には、知的な計算と剥き出しの感情が共存する、独自の凄みが宿っています。膨大なキャリアに裏打ちされた盤石な信頼感と、作品ごとに新たな表情を見せる変幻自在なアプローチは、多くの映画監督やクリエイターから高く支持されています。ただそこに居るだけで、観客の心を作品の世界へと深く引き込んでしまう彼女の力は、これからも日本映画の地平を広げ続けることでしょう。まさに、静かなる情熱で物語に魂を吹き込む、至高の俳優です。