あらすじ
1960年代。3歳のボク(オダギリジョー)は、真夜中に玄関の戸を蹴破って帰ってきた酔っぱらいのオトン(小林薫)にいきなり焼き鳥の串を食べさせられてしまう。オトンに手を焼いたオカン(樹木希林)はボクを筑豊の実家に連れ帰り、妹の“ブーブおばさん”の小料理屋を手伝いながら、女手一つでボクを育て始めるのだった。
作品考察・見どころ
本作の真髄は、普遍的な「母の愛」と「喪失への覚悟」を緻密に描いた点にあります。樹木希林が放つ圧倒的な慈しみと、若き日を実娘の内田也哉子が演じるという血の通った演出が、時間の重みを鮮明に映し出します。都会の象徴である東京タワーの硬質な光と、泥臭い家族の体温との対比が、観る者の心の奥底にある原風景を激しく揺さぶります。
原作の饒舌な筆致に対し、映画は「間」と「視線」でその行間を埋め尽くしました。オダギリジョーが体現する、だらしなくも切実な息子の揺らぎは、映像でしか表現し得ない生々しいリアリティを放っています。物語を追うのではなく、流れる時間を共に生きるような感覚。これは、すべての迷える大人たちに捧げられた魂の救済の記録といえるでしょう。
映画化された原作や関連書籍を読んで、映像との違いや独自の世界観を楽しみましょう。