あらすじ
陣馬山で発見された白骨死体の傍らにはマトリョーシカが埋められていた。被害者は5年前、行方不明とされていた男だった。神奈川県警刑事・彦坂は、青ざめる。その男こそ、5年前、組織ぐるみで隠蔽した事件の関係者だったのだ。県警に激震が走るさなか、八王子で、第二の惨殺死体が発見される。現場には第一の事件との関連性を示すマトリョーシカが残されていた。事件そのものを隠したい神奈川県警と、反目し合う警視庁の捜査班。組織の論理がもたらす闇に、はぐれ刑事たちが誇りをかけて、合同捜査を始める。大藪春彦賞受賞第一作!
ISBN: 9784198646530ASIN: 4198646538
作品考察・見どころ
呉勝浩が描く世界は、常に「剥き出しの人間」を突きつけてきます。象徴的なマトリョーシカは、幾重にも重なる組織の隠蔽と、その最深部に潜む拭い難い罪の肖像です。白骨死体と人形の不気味な対比が、読み手の倫理観を執拗に揺さぶる感覚こそが本作の真骨頂。剥いでも現れる虚飾の層に、著者の冷徹かつ熱い筆致が冴え渡ります。 組織の論理に抗い、誇りを懸けて泥を啜る刑事たちの群像劇は、凄絶な美しさを放っています。二つの警察組織の相克という骨太な構図の根底にあるのは、人間としての尊厳を問う祈りにも似た覚悟です。嘘が剥がれた先に待つ、震えるような真実と救済。ミステリの枠を超えた人間ドラマの極致を、ぜひその眼で目撃してください。