あらすじ
奇跡のアンソロジー、日韓同時刊行!
突如若者に舞い降りた「無」ブーム。世界各地に「無街」が建設されーー。
(村田沙耶香「無」)
夫がさりげなく口にした同級生の名前、妻は何かを感じとった。
(アルフィアン・サアット「妻」/藤井光・訳)
ポジティブシティでは、人間の感情とともに建物が色を変える。
(ハオ・ジンファン「ポジティブレンガ」/大久保洋子・訳)
先鋭化する民主化運動の傍らで生きる「あなた」たちの物語。
(ウィワット・ルートウィワットウォンサー「燃える」/福冨渉・訳)
都市に走った亀裂、浸透する秘密警察、押し黙る人びと。
(韓麗珠「秘密警察」/及川茜・訳)
ブラック職場を去ることにした僕。頭を過るのは死んだ幼馴染の言葉だった。
(ラシャムジャ「穴の中には雪蓮花が咲いている」/星泉・訳)
家族の「縁」から逃れることを望んできた母が、死を目前にして思うこと。
(グエン・ゴック・トゥ「逃避」/野平宗弘・訳)
3人の少年には卓球の練習後に集う、秘密の場所がある。
(連明偉「シェリスおばさんのアフタヌーンティー/及川茜・訳)
6人の放送作家に手を出した男への処罰は不当か否か。
(チョン・セラン「絶縁」/吉川凪・訳)
【編集担当からのおすすめ情報】
きっかけは韓国を代表する若手作家チョン・セランさんのひと言でした。
「韓中日+東南アジアの若手世代の作家7〜9人で、同じタイトルのもとそれぞれ違う短編小説を書いてアンソロジーを出してみたいです。今、思い浮かんでいるタイトルは『絶縁』です」
この提案を、『コンビニ人間』が世界的ベストセラーになった村田沙耶香さんに伝えたところ「痺れるテーマですね」と快諾。その後、アジア9都市9人の作家の参加が決定しました。『折りたたみ北京』にてヒューゴ賞を受賞したハオ・ジンファンさんをはじめ、いずれも気鋭の作家です。
多くの作品が既存作品の翻訳ではなく書きおろしという前代未聞のプロジェクト、日韓同時刊行です!
作品考察・見どころ
村田沙耶香という作家は、常に「常識」という名の薄皮を剥ぎ取り、その下に隠された異質な生の実感を描き出します。本作で彼女が挑む「絶縁」とは、単なる関係の終焉ではありません。それは、既存のシステムから魂を解き放ち、剥き出しの自己で世界と対峙するための、静かながらも切実な儀式なのです。 アジアの俊英たちと共鳴しながら綴られる物語は、分断が加速する現代において、孤独を「孤高」へと昇華させる力強い意志に満ちています。言葉の端々から立ち上がる、冷徹かつ過激な抵抗の精神。この一冊は、閉塞した日常を生きる私たちの認識を根底から揺さぶり、新たな自由の在り方を提示してくれる珠玉の文学的試みと言えるでしょう。