あらすじ
壊滅した星崎組の御曹司である清十郎と、先代組長に育てられた桃也。水上組傘下・椿山会に属する二人のうち、次期組長に指名されたのはよそ者の清十郎だった。若頭となった桃也は、清十郎の真価を問うため勝負を挑むが破れ、抱かれてしまう。清十郎に身体を開く夜が続いたある日、かつて男娼だった頃の桃也を欲望の餌食にしていた東和会会長広瀬が「椿山会を潰して桃也を後継者に据えてやる」と、その魔の手を伸ばしてきて...!?
ISBN: 9784048706148ASIN: 4048706144
作品考察・見どころ
水月真兎が紡ぐ本作は、血生臭い極道の抗争を背景にしながら、魂の極限状態における「所有と救済」を問う文芸的深みを湛えています。絶望の淵から這い上がった桃也が抱える拭い去れぬ孤独と、圧倒的な王者の風格を纏う清十郎。二人が交わす激しい愛執は、裏切りが日常の闇において、唯一無二の真実を掴み取ろうとする魂の咆哮に他なりません。 物語の核心にあるのは、過去の凌辱を凌駕する強固な自尊心の再生です。欲望の餌食とされた過去を抱える桃也が、清十郎という苛烈な光に曝され、自らの役割を再定義していく過程は圧巻。漆黒の情念の中に咲く一輪の信頼は、暴力と純愛が表裏一体であることを証明しています。この耽美な迷宮に足を踏み入れた読者は、そのあまりに美しい地獄の虜となるでしょう。