本作は冷徹な理知と情熱が火花を散らす社会派ミステリの真髄です。巨悪・北条との再臨が象徴するように、権力の腐敗と人間の業を暴き出す筆致は凄まじく、刑事の矜持を懸けた「法と正義の葛藤」という深遠なテーマが胸を打ちます。事件解決の先にある、魂の救済を問う重厚な人間ドラマが凝縮されています。
卓越した対話の妙は文字でこそ真価を発揮し、脳裏に鮮烈な情景を映し出します。冤罪や社会の歪みを突く緻密な論理と、随所に光る風刺的ユーモア。多様な短篇が織りなす世界は、ページをめくるたびに知的好奇心を激しく揺さぶる、まさに至高の知的エンターテインメントと呼ぶにふさわしい傑作です。