あらすじ
1964年元旦、長崎は老舗料亭「花丸」―侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、この国の宝となる役者は生まれた。男の名は、立花喜久雄。任侠の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌は人々を巻き込み、喜久雄の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。舞台は長崎から大阪、そしてオリンピック後の東京へ。日本の成長と歩を合わせるように、技をみがき、道を究めようともがく男たち。血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜け、数多の歓喜と絶望を享受しながら、その頂点に登りつめた先に、何が見えるのか?朝日新聞連載時から大きな反響を呼んだ、著者渾身の大作。
ISBN: 9784022515650ASIN: 4022515651
作品考察・見どころ
吉田修一が到達したこの巨編は、芸という魔物に魅入られた男たちの壮絶な魂の軌跡を描き出しています。任侠の家に生まれ、歌舞伎の頂点を目指す喜久雄の姿は、単なる成功譚ではありません。血の呪縛と芸への狂気が交錯する中で彼が纏う凄絶な美しさは、活字から匂い立つような色香を放ち、読者の五感を激しく揺さぶります。 映像版では圧倒的な視覚美や身体的躍動が補完されていますが、原作には表現者のみが見る深淵と、言葉でしか描き得ない人間の業が刻まれています。行間から溢れ出す熱量と、時代の変遷を肌で感じるような叙事詩的スケール感。両メディアを往復することで、私たちは国宝という極北の輝きに、より深く没入できるのです。