櫻田智也
本物の「伏線回収」と「どんでん返し」をお見せしましょう! 山奥で、顔を潰され、歯を抜かれ、手首から先を切り落とされた死体が発見された。事件報道後、警察署に小学生が訪れ、死体は「自分のお父さんかもしれない」と言う。彼の父親は十年前に失踪し、失踪宣告を受けていた。無関係に見えた出来事が絡み合い、現在と過去を飲み込んで、事件は思いがけない方向へ膨らみ始める。
櫻田智也が描く本作の真髄は、凄惨な損壊死体という謎を超えた、アイデンティティの根源を揺さぶるテーマにあります。顔を失い記号となった死体と、十年前の不在を埋めようとする少年の想いが交錯する時、読者は人間の存在の脆さと向き合うことになります。緻密な伏線は、論理的な快感のみならず、歪んだ愛憎を浮き彫りにする文学的装置として機能しています。 二転三転する真相の果てに待つのは、驚愕のどんでん返しだけではありません。論理の鎖が繋がった瞬間に立ち上がる、やるせなくも美しい叙情こそが本作の白眉です。パズルが完成すると同時に、読者の心に深く突き刺さる「失われた時間」の重みを、ぜひその身で体験してください。
櫻田 智也 は、日本の推理作家。北海道出身・在住。2013年、東京創元社主催の第10回ミステリーズ!新人賞を受賞し、デビュー。