あらすじ
強くたおやかに生きる女性たちが、みんな、みんな、愛おしい。 ――原田ひ香 東京・上野のカフェーで女給として働いた、 “百年前のわたしたちの物語”。 『襷(たすき)がけの二人』で直木賞候補となった著者、待望の最新作! 東京・上野の片隅にある、あまり流行っていない「カフェー西行」。食堂や喫茶も兼ねた近隣住民の憩いの場には、客をもてなす個性豊かな女給がいた。竹下夢二風の化粧で注目を集めるタイ子、小説修業が上手くいかず焦るセイ、嘘つきだが面倒見のいい美登里を、大胆な嘘で驚かせる年上の新米・園子。彼女たちは「西行」で朗らかに働き、それぞれの道を見つけて去って行ったが……。大正から昭和にかけ、女給として働いた“百年前のわたしたちの物語”。 【目次】 稲子のカフェー 嘘つき美登里 出戻りセイ タイ子の昔 幾子のお土産
ISBN: 9784488029364ASIN: 4488029361
作品考察・見どころ
百年前の東京・上野を舞台に、嶋津輝が描くのは、単なるノスタルジーに留まらない「生の力強さ」です。カフェーという社交場を舞台に、女給たちが纏う微かな嘘や虚栄、そしてその裏側に隠された切実な生存戦略。著者の筆致は驚くほど端正で、時代に翻弄されながらも己の足で立とうとする女性たちの矜持を、温かく、かつ鋭い洞察力で浮き彫りにしています。 一編一編が独立した輝きを放ちながら、通奏低音として響くのは「連帯」と「再生」の物語です。境遇も性格も異なる彼女たちが、束の間の交流を通じて互いの欠落を埋め、次なる一歩を踏み出す姿は、現代を生きる私たちの心をも激しく揺さぶります。歴史の片隅に消えていった無数の声に光を当て、愛おしい人間讃歌へと昇華させた直木賞受賞に相応しい珠玉の傑作です。