中国魅録
あらすじ
ISBN: 9784873762418ASIN: 4873762413
カンヌ映画祭グランプリ受賞作「鬼が来た!」その撮影現場で俳優・香川照之が見た異世界、そしてディープ・チャイナの衝撃。
本書は、若き俳優が異文化の狂気に翻弄され、自己を再構築していく魂の記録です。姜文という巨星との対峙、そして底知れない中国の大地のエネルギーに、香川照之氏が剥き出しの感性で挑む姿は、単なる日記を超えた「人間変革の文学」としての凄みを放っています。混沌とした現場で生の実感を掴み取ろうとする著者の筆致は、読者の心に強烈な熱量を叩きつけます。 傑作「鬼が来た!」と併読することで、作品の魅力はさらに深化します。銀幕のモノクロームな狂気の裏側で、いかにしてあの感情が練り上げられたのか。映像では語り尽くせぬ撮影現場の凄絶な葛藤をテキストで補完することで、物語は圧倒的な立体感を持って迫ります。表現者が極限で見た景色は、観る者の魂を激しく震わせることでしょう。

圧倒的な熱量と緻密な計算に基づいた演技で、現代日本の映像界における唯一無二の顔となった香川照之。三代目市川猿之助と浜木綿子という希代の表現者を両親に持ちながら、幼少期の離別を経て、かつては実父から絶縁を突きつけられるという過酷な宿命を背負ってきました。東京大学で社会心理学を修めた知性が、血脈に流れる表現者としての本能と共鳴したとき、彼は他の追随を許さない独自の地位を確立しました。これまでに携わった映像作品は177本に及び、平均評価6.8という実績がその確かな実力を物語っています。特にドラマや犯罪、ミステリーといった深淵な人間模様を描くジャンルにおいて、彼の存在は物語の重力そのものとなります。日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞した「劔岳 点の記」をはじめ、数々の名作で見せる怪演は、観客の深層心理を激しく揺さぶります。心理学的なアプローチで役を解体しながらも、ボクシングで培ったような野性的で刹那的な爆発力を芝居に持ち込むそのスタイルは、まさに表現の極北。九代目市川中車として伝統芸能の継承にも挑む彼は、自らの葛藤をすべて芸の肥やしへと昇華させ、スクリーンの中に人間という生き物の業と美しさを焼き付け続けています。