あらすじ
マカオの水上都市を牛耳るカジノ王・瓜上恭一郎はひとり娘を溺愛していた。その娘・千咲に対し、正体不明の相手から誘拐予告の脅迫文が送りつけられた。普通、誘拐は秘密裏に行なわれ、予告などありえない。だが、いたずらではない証拠に、千咲を乗せた送迎車で時限発火装置が作動する騒ぎが発生。元地下格闘技の女王・二毛作甘柿はこの奇妙な話に興味を持ち、マカオに飛び立つ―。『このミス』大賞シリーズ。
ISBN: 9784800229663ASIN: 4800229669
作品考察・見どころ
熱気渦巻くマカオを舞台に、柊サナカが描くのは「守る者」の矜持と魂の救済です。地下格闘技の女王・甘柿という鮮烈なヒロミズムが、不条理な誘拐予告という謎に挑む姿は、単なるエンターテインメントの枠を超え、暴力の果てにある純粋な慈愛を浮き彫りにします。著者の卓越した筆致は、カジノの喧騒や水上の湿り気までも鮮明に描き出し、読者を異郷の闇へと引きずり込む魔力を持っています。 物語の根底に流れるのは、歪な愛と自己再生という深遠なテーマです。奇妙な依頼の背後に潜む人間の業、そして守護者としての覚悟が、ページを捲るたびに熱く胸を打ちます。冷徹な戦いの美学と、ふとした瞬間に漏れる人間臭い情念が交錯するこの一冊は、ジャンルの壁を突き抜けるほどの強烈なカタルシスを私たちに突きつけてくるのです。