あらすじ
東京・谷中で三代続く今宮写真機店には、魔鏡に消えたカメラを探す男、スパイカメラを求める女性など、クセのある客ばかりが訪れる。認知症の老人が遺した写真や、何度も壊れてしまうカメラの謎など次々に舞い込む問題を、三代目店主の今宮とアルバイトの来夏が鮮やかに解決していく。ニコンF2、ライカM3、ハンザキヤノン...魅力的なクラシックカメラの名機とともに贈るシリーズ第二弾!
ISBN: 9784800261533ASIN: 4800261538
作品考察・見どころ
本作の神髄は、単なる精密機械としてのカメラ描写に留まらず、レンズ越しに切り取られた「誰かの人生」を丁寧に修復していく慈愛に満ちた眼差しにあります。ニコンやライカといった名機の機構が、持ち主の秘めた想いや忘れ去られた記憶を解き明かす鍵となる構成は実に見事です。古い機械に再び光を灯す行為が、そのまま人々の止まっていた時間を動かす救済へと繋がる物語の構造には、思わず胸が熱くなります。 三代目店主・今宮の静謐なプロフェッショナリズムと、アルバイトの来夏の瑞々しい感性が織りなす対話は、読者をノスタルジックな谷中の路地裏へと誘います。過去を記録する道具であるカメラを扱いながら、本作が描き出すのは常に「今をどう生きるか」という未来への希望です。一編の写真を巡る謎が解けた時、読者の心にも鮮やかな景色が写し出されることでしょう。