あらすじ
「人生最悪の日ですか?」
街角で黒猫に訊かれたら、
それは不思議な図書館への招待ーー
結婚式を目前にして恋人に振られた千紗は、同時に仕事も住む場所もなくして不幸のどん底にいた。そんな千紗に声をかけてきたのは、路地裏の一匹の黒猫ーー人生最悪の日かと黒猫に訊かれ、やけくそ気味に「そうだ」と答えた千紗は、気がつくと不思議な図書館に。自分の人生を一冊の本に書きあげるまで出られないと言われるが、そこには千紗同様迷い込んできた、個性豊かな人たちがいて……。
ISBN: 9784596962737ASIN: 4596962731
作品考察・見どころ
柊サナカ氏の筆致は、絶望の淵に立つ魂にそっと寄り添うような、静謐ながらも温かな慈愛に満ちています。本作の本質は、自身の歩みを客観視し、一冊の本に綴るという「物語化」の過程にあります。最悪だと思い込んだ過去さえも、自らの手で編み直すことで再生の糧に変える。その文学的なカタルシスこそが、本作が放つ最大の輝きと言えるでしょう。 他者の記憶と共鳴し、喪失を肯定していく人々の姿には、現代を生きる我々への深い洞察と救いが込められています。黒猫に導かれた先の図書館は、読者自身の内面を映し出す鏡に他なりません。読み終えた時、あなたの手に残るのは、自身の人生という唯一無二の物語を愛おしむための、力強くも優しい勇気であるはずです。