BerendtJohn
1996年、ヴェネツィアの至宝「フェニーチェ劇場」焼失!事故か、それとも放火か?謎に取り憑かれたジャーナリストの前に次々と出没する摩訶不思議な人々。傑作ノンフィクション。
ジョン・ベレントは、ヴェネツィアという迷宮の皮を剥ぐ魔術師です。フェニーチェ劇場の焼失を起点に、彼は火災の真相以上に、炎に照らされた街の「歪な美しさ」を描き出します。貴族や職人たちが織りなす虚飾と真実の境界線は、研ぎ澄まされた筆致により、読者の想像力の中でより妖しく、芳醇な香りを放ち始めます。 本作の真髄は、伝統に固執する人々の滑稽さと気高さを活写した人間喜劇としての深みにあります。著者の冷徹かつ愛情深い観察眼は、読者を傍観者から秘密の共犯者へと変えてしまう。頁を捲るたび、水都の暗がりに潜む抗いがたい魔力に魅了される、極上のノンフィクション体験がここにあります。