あらすじ
映画原作『犯罪小説集』とあわせてシリーズ累計20万部突破! 著者のライフワーク第2弾
「もう、逮捕でもなんでもしてくれんね」
高校卒業後、地元の北九州を出て職を転々としてきた福地秀明。特に悪いことをした覚えもないのに不幸続きで、年老いた母親と出口のない日々を送る秀明は、一方通行違反で警察に捕まった時、ついに何かがあふれてしまった。そのまま逃走を始めた秀明は……(「逃げろ九州男児」)。
職を失った男、教師と元教え子、転落した芸能人、失踪した郵便配達員ーー日常からの逸脱を描く4つの物語。
「小説の最前線に位置する短編集」(解説より) 酒井信(文芸批評家)
逃げろ九州男児
逃げろ純愛
逃げろお嬢さん
逃げろミスター・ポストマン
解説 酒井信
ISBN: 9784041127599ASIN: 4041127599
作品考察・見どころ
吉田修一が描くのは、善悪の境界が揺らぐ瞬間の、脆くも美しい人間像です。本作の核心は、日常という檻から逸脱せざるを得なかった者たちの切実な叫びにあります。読者は彼らの逃走を通じ、己の内に潜む「ここではないどこかへ」という渇望を突きつけられるでしょう。乾いた文体から漂う孤独と、逃げた先に差す光は、正に文芸の真骨頂です。 映像版では逃亡の緊迫感が肉体化されますが、原作は逃げる者の内面にある静かな絶望を、より深く緻密に描出しています。映像の外的な衝撃と、活字が呼び覚ます内的な共鳴。この両者を往還することで、物語が持つ多面的な重奏性を、魂の底から体感できるはずです。