柚木麻子
結婚して三年ほどの三十歳の主婦、初美。編集者の夫とは仲が良く、優しい彼に不満はないが、夜の営みが間遠に。欲求不満で同級生の男と浮気をしそうになったり、義弟に妄想、浪人生を誘惑、果ては乳房を触診する女医にまで発情する始末。夫婦はエロさから遠ざかる?幸せとセックスレスの両立は難しい?
柚木麻子の筆致は、幸福な日常で渇きに身悶える女性の業を鮮やかに暴き出します。本作の魅力は単なる性欲の暴走ではなく「妻」という役割で封じ込められた野生の回復を描いた点にあります。端正な生活の裏に潜む情動は、完熟した果実のように毒々しくも甘美な生命感を放っています。 愛ゆえに触れられない皮肉を、著者は残酷なユーモアと圧倒的な筆力で肯定します。剥き出しの欲望に奔走するヒロインの姿に、読者は自身の内側に眠るクレイジーな一面を突きつけられるはず。これぞ平穏な日常を揺さぶる、真実の情念の物語です。
柚木 麻子 は、日本の小説家。