あらすじ
「君を殺す」―復讐の誓いと訣別から、半世紀。政治家となったソリヤは、理想とする“ゲームの王国”を実現すべく最高権力を目指す。一方のムイタックは渇望を遂げるため、脳波を用いたゲーム“チャンドゥク”の開発を進めていた。過去の物語に呪縛されながら、光ある未来を乞い願って彷徨うソリヤとムイタックが、ゲームの終わりに手にしたものとは...。第38回日本SF大賞&第31回山本周五郎賞受賞作品。
ISBN: 9784150314064ASIN: 4150314063
作品考察・見どころ
小川哲が描き出すのは、カンボジアの凄惨な歴史を土壌に、想像力の極北で開花した壮大な虚構の王国です。下巻では、政治とテクノロジーという異なる手段で理想郷を追う二人の対峙が、静謐ながらも凄まじい熱量で綴られます。過去の呪縛を振り払い、神の領域へと手を伸ばそうとする彼らの渇望は、読む者の魂を激しく揺さぶるでしょう。 本作の真髄は、現実をゲームというシステムに落とし込むことで、人間の意志や運命の残酷さを鮮やかに浮き彫りにした点にあります。言葉の一つひとつが緻密に積み上げられ、やがて虚実の境界が崩壊していくカタルシスは、活字表現でしか到達し得ない深淵です。これは単なるSFの枠を超えた、人類の希望と絶望を問い直す現代の叙事詩といえます。