あらすじ
殺人事件から1年後の夏。房総の漁港で暮らす洋平・愛子親子の前に田代が現われ、大手企業に勤めるゲイの優馬は新宿のサウナで直人と出会い、母と沖縄の離島へ引っ越した女子高生・泉は田中と知り合う。それぞれに前歴不詳の3人の男...。惨殺現場に残された「怒」の血文字。整形をして逃亡を続ける犯人・山神一也はどこにいるのか?『悪人』から7年、吉田修一の新たなる代表作!
ISBN: 9784120045868ASIN: 4120045862
作品考察・見どころ
本作は「信じること」の残酷さと尊さを描いた、吉田修一文学の真骨頂です。三つの地で交錯する物語は、正体不明の男たちへの疑念を通じ、人間の深淵に潜む孤独を暴き出します。読者は「怒り」という感情が、単なる暴力ではなく、愛への渇望や自己不信の裏返しであることを突きつけられ、魂を激しく揺さぶられるでしょう。 映像版では俳優の熱演が光りますが、原作には文字でしか到達できない心理描写の極北があります。行間から滲む登場人物の微かな吐息や、不信感が静かに侵食していく恐怖は、テキストならではの醍醐味です。両者を味わうことで、信じたいと願う切実な祈りが、より多層的な響きを持って読者の胸に迫ります。
