阿久井真が描く本作の真骨頂は、個々の魂の叫びが合奏へ昇華される瞬間の熱量にあります。第9巻の舞台では、少年少女の渇望や怒りが「バッカナール」に乗り、紙面から轟音となって溢れ出します。静止画でありながら読者の鼓膜を震わせる圧倒的な筆致は、音楽表現の極致と言えるでしょう。
アニメ版の鮮烈な音響に対し、原作は言葉でしか描けない「心の深淵」を深く抉ります。行間に滲む葛藤や視線の交錯は、読者の想像力の中で唯一無二の響きを奏でます。映像で耳を、原作で魂を揺さぶられる重層的な体験こそ、本作を味わい尽くすための最大の贅沢なのです。