阿久井真が描く本作の真髄は、静止画の中に音の色彩と震動を鮮烈に刻み込む筆致にあります。第6巻では、三年生の引退という惜別の情が演奏会の緊張感と見事に共鳴。一音に込められた個人の葛藤が五線譜を超えて魂を揺さぶる、まさに「視覚で聴く」音楽体験の極致です。
アニメ版が奏でる具象的な調べに対し、原作は行間に宿る圧倒的な心理描写が魅力です。読者の想像力が音のない紙面で爆発し、物語がより個人的な体験へと昇華される。文字と線が紡ぎ出す静寂と熱情の対比こそ、表現媒体としての漫画が到達した文学的叙事詩といえます。