あらすじ
絶体絶命の紙問屋、大逆転の妙手は!?
時は、大老井伊直弼が惨殺され、動乱の気配が漂う幕末。
紙問屋永岡屋で誠意一筋、長年精勤してきた勘七は、主人善五郎の強い望みで跡を継ぎ、若旦那となった。
その勘七に小諸藩の上屋敷奉行高崎から大きな初仕事が舞い込む。藩札作りだ。
小諸藩は明君の呼び声高い藩主がおり、政は安定、財も潤沢らしい。藩札作りには二千両も支度してあるという。
幸先のよい出だしを切った、勘七がそう思ったのも束の間、商売仲間である醤油問屋広屋の浜口儀兵衛から、藩主が亡くなったと耳にする。
胸に不安が膨らむ中、ある夜、永岡屋が盗賊に襲われてしまう。盗賊はなんと高崎の配下だった。
配下は藩札と版木を入れた行李を盗んで姿を消したのだ。
襲われた際の傷がもとで、命を落とした善五郎を悲しむ暇もなく、主人として小諸藩に赴き、商いを質す勘七。
だが、新任の上屋敷奉行は「賂を受けていた前任の空の商い」として、二千両を踏み倒しにきた。
絶体絶命の危機に瀕した勘七に大逆転はあるのか?
幕末の三舟こと勝麟太郎や豪商高島屋嘉右衛門らの協力を得ながら、命を懸けて再建を図る勘七の懊悩と奮闘を、直木賞作家が瑞々しく描く。
商人道小説の傑作!
【編集担当からのおすすめ情報】
2010年に「第11回小学館文庫小説賞」を受賞以来、細谷正充賞・本屋が選ぶ時代小説大賞・新田次郎文学賞・山本周五郎賞・直木三十五賞を立て続けに受賞した、押しも押されもせぬ実力派の著者による名作です。『絡繰り心中〈新装版〉』『横濱王』もぜひ!
作品考察・見どころ
直木賞作家・永井紗耶子が放つ本作は、幕末を武士の刀ではなく、商人の才覚と「言葉」で切り拓く熱き人間讃歌です。静謐かつ力強い筆致で描かれるのは、価値観が覆る変革期に何を信じ抜くかという普遍的な葛藤。商いという戦場に身を投じる若者たちの瑞々しい感性と、したたかな生存戦略が交錯する瞬間に、読者は魂を激しく揺さぶられるはずです。 特筆すべきは「寿ぎ」に込められた、祈りにも似た精神性です。商いの本質を「人と人との結びつき」に見出す著者の温かな眼差しが、全編を貫いています。移ろいゆく時代の彩りとともに語られる商人たちの矜持は、現代を生きる私たちの背中を力強く押し、絶望の淵でも明日を祝うための勇気を鮮やかに灯してくれます。