長岡弘樹
出頭という言葉を聞くと、芹沢はあの出来事を思い出す。刑務官が押さなければならない、死刑執行の3つのボタン──「ラストストロー」。家族にまつわる七編の短編を通して、人生の機微をうがつ。
長岡弘樹の筆致は、冷徹なメスのように家族という聖域の裏側に潜む罪を抉り出します。刑務官の葛藤を描く表題作を筆頭に、極限状態に置かれた人間が漏らす本音の震えは、読み手の倫理観を激しく揺さぶり、安易な共感を拒む凄絶な深みに満ちています。 七つの物語を貫くのは、運命を左右するボタンを「押す」瞬間の静寂と重圧です。ミステリとしての緻密な構成に、人間の業を見つめる冷徹な眼差しが重なり、日常が瞬時に戦慄の舞台へと変貌する。自らの指先にも宿るかもしれない「罪の重み」を突きつける、魂を激しく震わせる一冊です。
長岡 弘樹 は、日本の小説家、推理作家。山形県山形市出身、在住。山形県立山形東高等学校、筑波大学第一学群社会学類卒業。