あらすじ
ISBN: 9784041305218ASIN: 4041305217
放課後の誰もいない理科実験室でガラスの割れる音がした。壊れた試験管の液体からただようあまい香り。このにおいをわたしは知っている―そう感じたとき、芳山和子は不意に意識を失い床にたおれてしまった。そして目を覚ました和子の周囲では、時間と記憶をめぐる奇妙な事件が次々に起こり始めた。思春期の少女が体験した不思議な世界と、あまく切ない想い。わたしたちの胸をときめかせる永遠の物語もまた時をこえる。
筒井康隆氏が放つ本作は、SFの枠を超えた思春期の寓話です。ラベンダーの香りに象徴される記憶の不可逆性と、揺れ動く少女の心理が鮮烈に描かれています。普段の著者が持つ毒気が影を潜め、純真な情緒が際立つ本作は、時という奔流に抗う人間の切なさを浮き彫りにする文学的傑作といえるでしょう。 幾多の映像化を経て現代の神話となった本作ですが、原作が持つ内省的な深みは格別です。映像がドラマチックな躍動感を与える一方で、小説は静謐な言葉によって読者の心に永遠の残像を刻みます。文字でしか触れられないヒロインの繊細な心の震えを、ぜひその手で確かめてください。

実写化・アニメ化された映画やドラマを観て、原作小説ならではの美しい心理描写や、映像化で新たに加えられた解釈・演出との違いを楽しみましょう。