あらすじ
ISBN: 9784007314155ASIN: 4007314152
明治一七年から二一年までの留学体験を下敷きにしたドイツ三部作『舞姫』『うたかたの記』『文づかひ』と、九年の歳月をかけてアンデルセンの小説を翻訳し、原作以上の評価を得た『即興詩人』(抄)を収録。

静謐な佇まいの中に、人間の滑稽さと悲哀を巧みに同居させる山崎一は、日本映画界において代えの利かない日常の体現者である。派手な外連味を排し、徹底して抑制された表現で役に血を通わせるその真摯な姿勢は、銀幕の隅々にまで深いリアリティを浸透させてきた。舞台芸術の研鑽で培われた確固たる技術を礎に、彼は長い年月をかけて、市井の人々が抱える微細な感情の揺れを丁寧に掬い取ってきた。かつては演劇の熱狂の中に身を置きながら、次第にその活動を映像の世界へと広げ、今やあらゆる物語の屋台骨を支える不可欠な存在として確固たる地位を築いている。彼のキャリアを俯瞰すれば、そこには一貫した誠実さと、役を己に引き寄せる深い探究心が見て取れる。主役を際立たせるバイプレイヤーとしての矜持を持ちつつ、観客の記憶に鮮烈に刻まれるのは、彼が演じるキャラクターの背後に流れる、語られざる人生の厚みゆえだろう。長年にわたる静かなる献身は、出演する作品すべての質を底上げし、日本映画全体のスタンダードを静かに押し上げてきた。派手な称号よりも、画面に映るその一瞬の説得力で観る者を納得させる。彼は、表現の深淵を見つめ続ける、真の映画人である。