福井晴敏が紡ぐ本作は、富野由悠季が描いた映像世界を単に文字に起こしたものではありません。黒歴史という壮大な喪失の記憶に対し、人間の業と祈りを凄まじい筆致で刻み込んだ鎮魂歌です。機械仕掛けの神がもたらす破壊と、それに対峙するロランたちの魂の相克は、読者の心に癒えぬ傷跡と、それ以上の深い希望を刻みつけます。
アニメ版が牧歌的な再生の物語であるなら、この小説版は血の通った人間たちの凄絶な克己の記録です。映像では描ききれなかった内面の闇と光が、福井文学特有の重厚な文体で補完され、両者を味わうことで初めて物語の全貌が浮かび上がります。静謐なラストに辿り着いた時、あなたはガンダムという神話の真の終焉と始まりを目撃するはずです。