本作の真骨頂は、宇宙の存亡ではなく「壊れたリモコン」のために時をかけるという、極めて卑近で愛おしい動機にあります。上田誠氏が仕掛ける精緻なパズル的構造は、青春という混沌とした季節に一本の鮮やかな論理を通し、喜劇の皮を被りながらも「今この瞬間」の不可逆性という切実なテーマを浮かび上がらせます。
実写版では本広克行監督が、この数学的な脚本に「夏休みのけだるい湿気」という肉体的な熱量を与えました。活字で論理の完璧な整合性に知的な興奮を覚え、映像で若者たちの無鉄砲な躍動感に魂を揺さぶられる。この往復書簡のような体験こそが、本作を味わい尽くす唯一無二の贅沢なのです。