本作は、究極の片思いが結婚という結実を迎え、さらなる熱量を帯びて加速する成長と献身の叙事詩です。琴子の猪突猛進な愛が、天才・直樹の孤独を溶かし、彼を血の通った人間へと変貌させる過程は、魂の救済に近い感動を呼び起こします。多田かおるの躍動感あふれる筆致が、不器用な二人の絆を鮮烈に描いています。
映像版では俳優の熱演が光りますが、原作本には行間に潜む琴子の葛藤や直樹の微細な心の揺れが克明に刻まれています。紙上の独白と映像のリアリズムを往復することで、未完の傑作は読者の心の中で永遠に輝き続けるのです。