一之輔、高座に粗忽の釘を打つ
あらすじ
ISBN: 9784861919138ASIN: 4861919134
二ツ目時代から頭角を現し、逸材と言われた春風亭一之輔が、2012年3月、21人抜きの大抜擢で真打昇進を果たした。近年稀に見る大盛況となった披露興行の詳細なドキュメント、50日間でかけたすべてのネタ24席の解説を収録。小学校での落語との出逢い~日大芸術学部の落語研究会を経て01年、恩師一朝に入門。師の薫陶を受け、入門から11年で真打に昇進!鮮やかな飛翔を遂げた一之輔がこれまでの軌跡、そしてこれからへの思いを、初めての書籍に綴る。

現代のエンターテインメント界において、伝統芸能の粋を映画というキャンバスに鮮やかに塗り替える唯一無二の表現者、それが春風亭一之輔です。寄席という静謐な空間で培われた比類なき話術と、人間の業を愛おしむような温かな眼差しは、スクリーンを通した時、一人の俳優としての凄みを帯びて観客を圧倒します。 彼のキャリアの根幹にあるのは、江戸の粋を現代の呼吸で体感させる卓越した感性です。若くして異例の抜擢を受け、落語界の頂点へと登り詰めたその軌跡は、単なる成功物語に留まりません。映画出演においては、台詞の端々に宿るリズムや、一瞬の沈黙で物語の背景を語る静的な演技によって、作品に奥行きと豊かな叙情をもたらしてきました。主役を張るスター性はもちろんのこと、作品の空気感を一変させるバイプレイヤーとしての確かな存在感は、映像界のクリエイターたちからも熱い視線を浴びています。 統計的な評価以上に彼を価値づけているのは、古典という揺るぎない土台を持ちながらも、常に新しい表現の地平を切り拓こうとする冒険心です。声という楽器を自在に操り、演じる役柄の魂を瞬時に掴み取るその技術は、映画界においても極めて稀有な才能と言えるでしょう。伝統を背負いながらも自由奔放に振る舞うその佇まいは、これからも日本映画に新たな風を吹き込み、観客の心に深い余韻を残し続けるに違いありません。