あらすじ
多数の死者を出したビル火災以来、歌舞伎町は史上空前の冬の時代から抜け出せずにいた。この街で非合法のゲーム喫茶を経営する元シャブ中毒・元銀行員の早瀬。彼は、幼なじみの警官が持ち込んだ1キロのシャブによって、ビル火災の謎と疑惑を知ることになる。歌舞伎町浄化作戦の裏側で進行していた陰謀と、やがて早瀬が辿り着く絶望的な真実とは。第2回『このミス』大賞優秀賞受賞作家が描く非合法ギャンブル戦争。
ISBN: 9784796658379ASIN: 4796658378
作品考察・見どころ
ハセベバクシンオーが描く本作の真髄は、欲望と絶望が交錯する不夜城・歌舞伎町の「痛み」を、乾いた筆致で抉り出すハードボイルドな叙情性にあります。元銀行員にして元中毒者という、知性と破滅の両極を併せ持つ主人公・早瀬の視点は、再開発という大義名分のもとで切り捨てられる者たちの呻きを鮮烈に浮き彫りにします。 物語を貫くのは、浄化という名の暴力が踏みにじる、剥き出しの人間性です。一キロの覚醒剤を媒介に暴かれるのは、街の深層に眠る醜悪な陰謀。すべてを賭けた「ダブルアップ」の果てに早瀬が辿り着く、冷徹かつ圧倒的なカタルシスこそが本作の白眉です。社会の境界線上で足掻く人々の魂が激突する、その熱量に圧倒されずにはいられません。





