ハセベバクシンオーが描く歌舞伎町は、暴力と欲望が渦巻く一方で、奇妙な優しさが同居する迷宮です。本作の真髄は、殺伐とした日常を軽妙なユーモアで包み込み、都会の片隅で生きる者たちの孤独を鋭く穿つ視点にあります。無垢な命が集うペットショップという場が、混沌とした人間模様を濾過する聖域として機能する構造が実に見事です。
対人恐怖症の元医師・湊が放つ知的な観察眼は、物語に本格ミステリーとしての深みを与えています。事件を通じて浮き彫りになるのは、言葉を持たぬ動物と、言葉に翻弄される人間たちの鮮やかな対比です。騒がしくも愛おしい街のリアルを活写した本作は、現代人の荒んだ心に効く至極のサプリメントとなるでしょう。