矢部太郎が描く世界は、忙しない現代で見落とされがちな心の余白そのものです。本作の魅力は、著者の繊細な筆致が、読者の奥底に眠るささやかな寂しさを肯定してくれる点にあります。漫画と文章が織りなすリズムは、著者の心象風景を分かち合うような、極めて親密な読書体験をもたらします。
自分を労わる「ご自愛」を、誠実な生き方として昇華させた本作の眼差しは、鋭くも慈愛に満ちています。日常から抽出された気づきは、強張った心を解きほぐす魔法のようです。不完全な自分を愛おしく思わせてくれる、混迷の時代を生きる私たちが今最も必要としている珠玉の一冊です。