長岡弘樹
名人芸にため息!『教場』『傍聞き』のエッセンスのすべてが詰まった宝箱だ!(文芸評論家末國善己氏)原稿用紙たった20枚で挑んだ〈18の短編ミステリー〉に酔う!K署の刑事・北山と南谷は、小学生誘拐事件の容疑者宅の明かりを監視していた。ところが、一瞬の隙を衝かれ、近くのホテルのパーティー会場に逃げ込まれてしまう。200名余の参加者はほぼ、容疑者と同じ紺のスーツ姿。二人は逮捕直前の応援要員で、渡されていたのは高校時代の顔写真だけ。このままでは責任問題になる……。その時、北山は驚きの行動に出た(「声探偵」より)。
短編の名手、長岡弘樹が二十枚という極限の制約で到達した、ミステリーの純粋結晶です。余計な贅肉を削ぎ落としたからこそ、一瞬の洞察が鮮烈な閃光となって読者の心臓を貫きます。静謐な文体の中に人間の業を凝縮させる筆致は、職人芸を超えた芸術の域に達しています。 本作の本質は、日常に潜む「声なき声」を拾い上げる圧倒的な観察眼にあります。わずかな違和感から真実を導く論理の美しさと、最後に訪れる魂の震え。短くも重厚な読後感は、言葉の道具箱を開けた者だけが味わえる至福の報酬です。一編ごとに人生の深淵を覗き見るような、濃密な悦楽に浸ってください。