東野圭吾の到達点と言える本作は、謎解きの枠を超え、罪と罰の重力に抗う魂の慟哭を描き出しています。三十三年の時を隔てて交錯する事件。その中心で対極の立場に置かれた遺族と加害家族が、血の宿命に翻弄されながらも真実を求めて共鳴し合う姿には、震えるほどの切なさが宿っています。
著者の真骨頂は、自白の先にさらなる深淵を提示する筆致にあります。善悪の二元論では語れない、人間の業と愛の複雑なグラデーション。読者は正義とは、そして人を赦すとは何かという究極の問いを突きつけられるはずです。東野文学が辿り着いた、魂の救済を問う記念碑的傑作をご堪能ください。