なかにし礼が魂を削り、激動の満洲を描いた本作は、国家の崩壊と人間の極限を鮮烈に浮き彫りにします。実母を投影したヒロインの凄絶な生き様は、虚飾を剥ぎ取った「生」への執着そのもの。そこには過酷な運命に翻弄されながらも、愛と誇りを守り抜こうとする人間の、崇高なまでの美しさが宿っています。
戯曲として研ぎ澄まされた言葉は、剥き出しの感情となって読者を一気に戦火の地へ引き摺り込みます。台詞に込められた生々しい叫びや、行間に漂う悲しみは、小説版とは異なる鋭利な痛みで胸を突くでしょう。赤い月の下、生の意味を激しく問う本作は、読む者の魂を根底から揺さぶる文芸の真髄といえる傑作です。