あらすじ
【時代小説SHOW 2025年時代小説ベスト10文「文庫書き下ろし部門」🏆第1位🏆!】【いよいよ天下分け目の決戦へーー】
慶長五年、関ケ原の戦いが迫る九月。真田家の若き家臣・鈴木右近、数え十七。主君・真田信幸の密命を胸に、右近は家来の榛名大吉、従僕の権蔵を連れて信州・戸石城を発った。託されたのは、柳生宗矩の名が記された一通の書状ーー。それを期日までに岐阜・宗章のもとへ届けねば、真田の命運が変わる。
道々の峠は険しく、夜は闇に沈み、昼は野武士が襲撃してくる。背に野太刀を負い、汗と息を刻みながら右近は走る。胸の奥には、ただ一つ、主を愛する気持ち。そしてもう一つ、仇敵・中山九兵衛への燃えるような復讐心。かつて父母を切腹に追いやった男を、必ず討つーーその誓いだけが、若武者を走らせていた。
引き裂かれた真田家、揺れる主従の情、迫る天下分け目の戦いーー。そんな中でも、少年はひたすら“純情”を貫く。魂の第二弾!
天下分け目の戦いを前に、真田信幸から鈴木右近に密命が下った。右近の剣の師・柳生宗章の元に、柳生宗矩からの密書を届けよ、と。信濃から岐阜へ、わずか七日の長駆。数々の峻険を越え、地侍の襲撃を退け、主君への忠義と両親の仇討二つの想いを胸に、若武者は家来とただひたすらに駆ける。困難を極める任務の結末はいかに?
右近よ、走れ。
宿命の関ケ原へ!
序章 いざ岐阜へ、関ケ原へ
第一章 長駆六十七里を駆ける
第二章 三つ巴紋を探せ
第三章 関ケ原ーー流星光底長蛇を逸す
第四章 大戦のあとに
終章 右近、変人ナリ
作品考察・見どころ
井原忠政が描く本作の真髄は、歴史の転換点を疾走する若き武士・鈴木右近の「純情」という魂の在り方にあります。関ケ原という巨大な歴史のうねりの中で、主君への峻烈な忠義と、両親を奪った仇敵への復讐心という二つの情熱を抱え、ただ一途に任務を全うせんとする右近。その揺るぎない精神性は、打算を排した人間本来の美しさを突きつけ、読者の心を激しく揺さぶります。 特筆すべきは、峻険な道を駆け抜ける圧倒的な筆致の臨場感です。汗の匂いや研ぎ澄まされる剣気、極限状態で開花する青年の成長を鮮烈に活写しています。大義のために個が翻弄される時代にあって、己の信条を愚直に貫き通す右近の姿は、混迷を極める現代を生きる我々にとって眩いばかりの光を放つ、至高の人間讃歌と言えるでしょう。