あらすじ
ISBN: 9784167919825ASIN: 4167919826
昨日までの当たり前は、いつの間にか去っていたのだ。
新銅山の発掘、面扶持の断行、藩校の開設、類を見ない大型船の造船……。
七郎右衛門は、幾度も窮地に陥りながらも、利忠の期待に応え続ける。
だが、家柄もなく、殿の信頼を一身に集め、旧態依然とした大野藩の改革を続ける七郎右衛門には、見えざる敵の悪意が向けられていた。
そんな中、黒船の襲来により、日本中に激震が走る。
時代は移り変わろうとしていたーー。
幕末最強バディ小説の誕生。新時代を生き抜くヒントがここにある!
文庫解説・細谷正充(文芸評論家)
江戸という時代の深奥に潜むあやかしたちの吐息を、現代に生きる私たちの心に響く情熱的な物語へと昇華させる稀代のストーリーテラー、それが畠中恵です。彼女の筆致は単なる時代小説の枠を超え、映像メディアにおいても観る者の魂を揺さぶる独自の様式美を確立しています。デビュー以来、彼女が紡ぎ出してきたのは、病弱な若だんなと彼を取り囲む個性豊かな妖怪たちが織りなす、不思議でいてどこか切ない日常の断片でした。その軌跡は、人間の業や孤独を否定せず、むしろそれらを愛おしいものとして包み込む慈愛に満ちています。キャリアを通じて蓄積された膨大な物語群は、一貫して共生という普遍的なテーマを宿しており、それが映像化される際にも、圧倒的な視覚的想像力と深い精神性を担保する土台となっています。作品が重なるごとに研ぎ澄まされていくのは、目に見えない存在を介して人間の美徳を浮き彫りにする比類なき洞察力です。統計的な成功以上に、彼女の存在が業界に与えた最大の影響は、ファンタジーと時代劇を高度に融合させ、幅広い層に届く新しいエンターテインメントの地平を切り拓いたことにあります。優しさと鋭さが同居するその物語世界は、これからも形式を変えながら、冷え切った現代人の心を温め続ける灯火として輝き続けるでしょう。