あらすじ
ISBN: 9784167919818ASIN: 4167919818
『しゃばけ』『まんまこと』の著者が初めて実在の人物をモチーフに描いた、痛快新感覚歴史小説。待望の文庫化!
合戦が始まる。敵の名は、借金ーー。
幕末期、ほとんどの藩が財政赤字に喘ぐ中、大野藩も例外ではなかった。
藩主・土井利忠は、様々な藩政改革を断行し、多額の借金を抱える藩財政を立て直そうとする。その執行役として白羽の矢が立てられたのが、若干八十石の内山家の長男である七郎右衛門良休。
四歳年下の殿の人柄と才覚に惚れきった七郎右衛門は、己の生涯を懸けて利忠と向き合い、時には反発しながらも、大野藩の再生に奔走する。
江戸という時代の深奥に潜むあやかしたちの吐息を、現代に生きる私たちの心に響く情熱的な物語へと昇華させる稀代のストーリーテラー、それが畠中恵です。彼女の筆致は単なる時代小説の枠を超え、映像メディアにおいても観る者の魂を揺さぶる独自の様式美を確立しています。デビュー以来、彼女が紡ぎ出してきたのは、病弱な若だんなと彼を取り囲む個性豊かな妖怪たちが織りなす、不思議でいてどこか切ない日常の断片でした。その軌跡は、人間の業や孤独を否定せず、むしろそれらを愛おしいものとして包み込む慈愛に満ちています。キャリアを通じて蓄積された膨大な物語群は、一貫して共生という普遍的なテーマを宿しており、それが映像化される際にも、圧倒的な視覚的想像力と深い精神性を担保する土台となっています。作品が重なるごとに研ぎ澄まされていくのは、目に見えない存在を介して人間の美徳を浮き彫りにする比類なき洞察力です。統計的な成功以上に、彼女の存在が業界に与えた最大の影響は、ファンタジーと時代劇を高度に融合させ、幅広い層に届く新しいエンターテインメントの地平を切り拓いたことにあります。優しさと鋭さが同居するその物語世界は、これからも形式を変えながら、冷え切った現代人の心を温め続ける灯火として輝き続けるでしょう。