あらすじ
二十一世紀終盤。かの震災の影響で原発が廃止され、ネオン煌めく明るい夜を知らないこの国を、新たな巨大地震が襲う。第二の地震が来るという政府の警告に抗い、大学の校舎で寝泊まりを続ける学生たちは、カリスマ的“リーダー”に希望を求めるが...極限状態において我々は何を信じ、何を生きるよすがとするのか。大震災と学生運動をモチーフに人間の絆を描いた、異色の青春小説。
ISBN: 9784103326229ASIN: 4103326220
作品考察・見どころ
綿矢りさが研ぎ澄まされた感性で挑んだ本作は、未曾有の災厄後を描くディストピアでありながら、人間の内奥に潜む「狂信」と「希望」の境界を抉り出す圧巻の意欲作です。ネオンが消えた暗澹たる世界で、若者たちがカリスマ的リーダーに己の生を委ねていく過程は、かつての学生運動の熱気と現代的な孤独が交錯し、読者の胸に冷たく、けれど激しい火を灯します。 物語の白眉は、極限状態における人間の脆さと、それでもなお何かに縋らずにはいられない生の執着を捉えた文体です。繊細な心理描写を得意とする著者が、本作では社会の崩落というマクロな視点から「信じることの危うさ」を鮮烈に描き出しました。震災という逃れられぬ運命を前に、私たちが真に縋るべきものは絆なのか、それとも幻影なのか。その問いが、最後の瞬間まで読者の魂を激しく揺さぶり続けます。