中村文則
至に至る病に冒されたものの、奇跡的に一命を取り留めた男。生きる意味を見出せず全ての生を憎悪し、その悪意に飲み込まれ、ついに親友を殺害してしまう。だが人殺しでありながらもそれを苦悩しない人間の屑として生きることを決意する―。人はなぜ人を殺してはいけないのか。罪を犯した人間に再生は許されるのか。若き芥川賞・大江健三郎賞受賞作家が究極のテーマに向き合った問題作。
中村文則が描く暗黒の極北。死の淵から生還しながら生を呪い、親友を殺めることで「屑」として生きる道を選んだ男の魂は、読者の倫理観を根底から揺さぶります。ドストエフスキー的な実存の問い「なぜ人を殺してはいけないのか」という命題に対し、本作は剥き出しの言葉で真っ向から挑みかかります。 特筆すべきは、悪意を単なる罪悪ではなく生存戦略として描く凄烈な筆致です。罪への苦悩を拒絶し、闇に身を投じる独白は、私たちの内側に眠る禁忌を暴き出すでしょう。絶望の果てに「生きる」意味を血を流しながら問う、純文学の真髄がここに凝縮されています。
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