あらすじ
直木賞作家の珠玉にして衝撃のデビュー作!
旗本の息子だが、ゆえあって家を出て町に暮らし、歌舞伎・森田座の笛方見習いをしている遠山金四郎は、朝帰りの日本堤田んぼで、女の骸を見つけた。
花魁の雛菊が斬り殺されていたのだ。
昨夜、狂歌師にして、戯作者でもある大田南畝の御伴で吉原遊廓で戯れた折、金四郎の隣に座っていた稲本屋の女だ。
胸の靄が晴れぬ中、興行の手伝いに戻る金四郎だったが、急に遠国に派遣されていたはずの父・景晋に呼び出され、素行を糺される。
景晋と旧知の間柄で、金四郎を心配して顔を見せた南畝の咄嗟の機転で難を逃れるも、なぜか雛菊の下手人探しをする羽目にーー。
雛菊に妙な縁がある、森田座の役者絵を手掛ける浮世絵師・歌川国貞とともに、事の真相を探り始める金四郎。
調べるうちに、雛菊は座敷に出るたびに相手の男へ心中を持ちかけていたことが知れる。
一体何が雛菊を死へ向かわせたのか?
心中を望む事情を解き明かしたはいいが、重荷を背負った金四郎は……。
直木賞作家の珠玉にして、衝撃のデビュー作。
【編集担当からのおすすめ情報】
2010年に「第11回小学館文庫小説賞」を受賞以来、新田次郎文学賞・山本周五郎賞・直木三十五賞を立て続けに受賞した、押しも押されもせぬ実力派作家のデビュー作です。。選考した人たちは、とても応募作とは思えなかったのではないでしょうか。もちろん、『福を届けよ 日本橋紙問屋商い心得』『横濱王』もおすすめです!
作品考察・見どころ
直木賞作家・永井紗耶子がデビュー作にして到達した、江戸の情熱と虚無が交差する比類なき傑作です。後に名奉行として知られる遠山金四郎を、若き葛藤の中に置く設定の妙もさることながら、特筆すべきは「心中」という極限の心理を、精緻な絡繰を解き明かすように描写する筆致です。華やかな歌舞伎や浮世絵の裏側に潜む人の業が、現代にも通じる普遍的な孤独として鮮烈に立ち現れます。 単なる犯人探しに留まらず、なぜ死を望まねばならなかったのかという魂の深淵に触れる時、読者はこの物語が持つ真の衝撃を味わうでしょう。史実の輝きと虚構の切なさが溶け合う文体は、まさに職人芸。時代小説の枠を超え、生と死、そして芸に生きる者の覚悟を鋭く問いかける、熱い血の通った一冊です。