東野圭吾が本作で描くのは、一流ホテルという劇場を舞台にした「仮面」の物語です。客という虚飾を守り抜こうとするホテルマンと、その真実を剥ぎ取ろうとする刑事。この相反する職業倫理の激突こそが、単なる謎解きを超えた文学的白眉といえます。騙し合いの裏側に潜む人間の孤独と矜持を、著者は鋭い筆致で鮮やかに炙り出しています。
対極に位置する二人が互いの信念に感化され、プロとして共鳴していく過程は圧巻です。一刻を争う緊迫感の中で、読後には人間の高潔さに触れたような深い感動が押し寄せるでしょう。まさに東野ミステリの到達点にして、読者の魂を激しく揺さぶる至高のエンターテインメントです。