昭和ギタン
あらすじ
ISBN: 9784901784863ASIN: 4901784862
状況劇場の座長と看板女優の子として生まれ、異彩を放つ劇団員に囲まれて育った多感な日々。しょっぱくてほろ苦い、自らの半生をリリカルに綴った大鶴義丹快心の書下ろしエッセイ。

日本のアングラ演劇の魂を血脈に宿し、知的な憂いと野性味を共存させる大鶴義丹は、スクリーンにおける稀代のストーリーテラーである。劇作家と名女優という至高の表現者を両親に持ち、幼少期から表現の深淵に触れてきた彼は、単なる二世俳優の枠を軽やかに飛び越え、自らの筆と感性で独自の地図を描き続けてきた。デビュー当初の瑞々しくナイーブな存在感から、時を経て滲み出るようになった円熟味、そして観客の予想を裏切る危うさを武器に、現在は作品の核を支える重層的な役どころを担っている。彼の特筆すべき強みは、演者としての枠に留まらず、監督や作家として物語の構造を俯瞰で見つめる視点を持っていることだ。その卓越した俯瞰力は、芝居に独特の間と奥行きをもたらし、一瞬の表情に何層もの文脈を投影させる。数多の作品群で見せる変幻自在なアプローチは、作り手の意図を繊細に汲み取りながらも、自身の美学を決して失わない孤高の精神の証左といえるだろう。伝統的な演劇的素養と現代的な感性を自在に往来するその佇まいは、日本映画界における貴重な接合点であり、これからも変容を続けることで我々に未知の情景を見せ続けてくれるに違いない。