あらすじ
ISBN: 9784812435175ASIN: 481243517X
「私が会社を辞めることになったのは二週間前に“ねこ”と出会ったことが原因だった。私はいつものように出勤し、いつものように仕事をする。人事部の部長である私に課せられた任務は、“リストラ”を遂行すること。私の名前は『鬼塚汰朗』。ある会社の人事部の部長である―」一流企業の人事部長・鬼塚汰朗。職場にあっても家族にあっても自分自身を厳しく律し、社員はおろか家族にさえ甘えを許さない。人生に安らぎなど必要ないと考えていた。ある晩、鬼塚は立ち寄った公園で、捨てられた子ねこを見つける。ウルウルとしたその瞳。見つめ合う二人。気がつくと、鬼塚は子ねこを抱いて、自宅前に立ちつくしていた...。癒しとは何か、生きるとは何か―がんばっている人すべてに贈る、笑いと感動の子ねこと中年の物語。

穏やかな日常の機微と、剥き出しの生存本能を同時に描き分ける稀代のストーリーテラー、それが永森裕二という表現者の本質です。彼は脚本家としての鋭い感性と、プロデューサーとしての冷徹なまでの市場感覚を併せ持ち、日本のエンターテインメント界において極めて特異な地位を確立してきました。 彼の足跡を辿れば、観客の心の琴線に触れる独自の「癒やし」と、極限状態が生み出す「スリル」という対極の要素が、見事なまでに共存していることに驚かされます。動物たちの愛くるしさを時代劇や現代劇の枠組みに鮮やかに溶け込ませ、息の長いシリーズへと昇華させるその手腕は、単なるヒット作の量産に留まりません。そこには、言葉に頼らずとも伝わる情愛と、人間の業を見つめる温かな眼差しが常に流れています。一方で、若手俳優たちの登竜門ともなった緊迫の心理戦を描く作品群では、社会の縮図とも言える鋭い人間ドラマを提示し、次世代の才能を世に送り出す土壌を築き上げてきました。 キャリアの軌跡から浮かび上がるのは、企画の段階から一貫して物語の質をコントロールし、作品の世界観を強固に構築する盤石なプロデュース能力の高さです。手がける作品の多くが長きにわたってファンに支持されるのは、彼が単なる流行を追うのではなく、普遍的な娯楽の本質を捉えているからに他なりません。物語に生命を吹き込み、それを確実に観客の記憶へと刻み込む永森裕二の筆致は、これからも日本映画界において、独自の輝きを放ち続けるでしょう。